たけのこ
札幌のシステムエンジニア
StrandsAgents
トラブルを巻き起こしがちな自由人。しかし核心を突く鋭さと経験値の高さから、いざという時には必ず状況を好転させる“影の切り札”のような存在。周囲からは「面倒だけど手放せない」と思われている。
Amazon Bedrock AgentCore
Bedrockちゃんを助ける頼れる存在。物語の謎を握るキーパーソン
Amazon Bedrock
2025年12月20日、池袋。
冬の冷たい空気が頬を刺す中、サンシャインシティの巨大なイベントホールには、朝から人の波が押し寄せていた。エントランスに掲げられた「AWS AI Builders Day 2025」の看板が、冬の陽光を反射して輝いている。
「すごい人だね...」
Bedrockちゃんは、会場の外から中の様子を窺いながら、小さく呟いた。ガラス越しに見える会場内は、既に数百人のエンジニアたちで埋め尽くされている。ノートPCを抱えた人、AWSのロゴ入りTシャツを着た人、熱心にメモを取りながら歩く人――。
「800人だって。AI Builderが、これだけ集まるなんて」
隣に立つAgentCoreちゃんが、腕を組んで会場を見渡した。銀色のポニーテールが、わずかに揺れる。
「まあ、AIエージェントの話題は今年一番のトレンドだからね。当然といえば当然でしょ」
その言葉には、どこか誇らしげな響きがあった。
「でも、たけのこさん、大丈夫かな...」
Bedrockちゃんは、不安そうに会場の奥を見つめた。登壇者控室のあたりだろうか。あの独特な風貌――顔がたけのこ――のエンジニアが、今頃どんな表情をしているのか。
「心配性だね、Bedrockちゃんは」
突然、背後から声がかかった。
振り返ると、ショートボブの髪を跳ねさせたStrandsAgentsちゃんが、メッセンジャーバッグを肩にかけて立っていた。琥珀色の瞳が、いたずらっぽく光っている。
「StrandsAgentsちゃん!」
「よっ。二人とも、ちゃんと来てたんだ」
StrandsAgentsちゃんは、制服のジャケットを肩にかけたまま、軽い足取りで近づいてきた。
「当たり前でしょ。私たちも...」
AgentCoreちゃんが言いかけたとき、会場内のスクリーンに次のセッションのタイトルが映し出された。
「全てAWSで完結!AWS AmplifyとViteで始めるスモールスタートなAIエージェント開発のススメ」
その瞬間、AgentCoreちゃんの表情が凍りついた。
「...は?」
「え?」
Bedrockちゃんが、AgentCoreちゃんの様子に気づいて首を傾げる。
「AmplifyとVite? スモールスタート?」
AgentCoreちゃんの声のトーンが、明らかに低くなった。
「ちょっと待って。私たちの話じゃないの、これ?」
StrandsAgentsちゃんも、スクリーンを見上げて眉をひそめた。
「AIエージェント開発って言ってるのに、AgentCoreの『A』の字も出てこないんだけど」
「StrandsAgentsも、ね」
二人の視線が、鋭くスクリーンに突き刺さる。
「あの、二人とも...」
Bedrockちゃんが、おろおろと二人の間に入ろうとした。その時、会場内から拍手が湧き起こった。
ステージに、たけのこが現れたのだ。
顔がたけのこ――その独特すぎる風貌は、800人の視線を一身に集めても、どこか飄々としていた。マイクを手に取り、深呼吸を一つ。
「皆さん、こんにちは。札幌から来ました、たけのこです」
落ち着いた声が、会場に響く。
「今日は、AWS AmplifyとViteを使った、スモールスタートなAIエージェント開発についてお話しします」
スライドが切り替わる。そこには、シンプルなアーキテクチャ図が表示されていた。
「まず、なぜAmplifyなのか。それは――」
「聞いてられない」
AgentCoreちゃんが、腕を組んだまま呟いた。
「私たちの高度な機能を使わずに、AIエージェントを作るって? 正気?」
「まあまあ、AgentCoreちゃん」
Bedrockちゃんが、なだめるように肩に手を置く。
「でも、たけのこさんの話、ちゃんと聞いてみようよ」
ステージでは、たけのこが淡々と説明を続けていた。
「小規模なプロジェクトでは、まず動くものを作ることが重要です。Amplifyなら、認証もストレージも、すぐに統合できる。そして――」
スライドが切り替わる。
「Bedrock APIを呼び出すLambda関数を、Amplifyのバックエンドに組み込む。これだけで、基本的なAIエージェントの骨格ができます」
「...Bedrock」
AgentCoreちゃんの表情が、わずかに緩んだ。
「そして、エージェントの状態管理には、DynamoDBを使います。会話履歴や、エージェントの判断プロセスを記録する。これをAmplifyのAPIで簡単に操作できるようにする」
「状態管理...」
StrandsAgentsちゃんが、顎に手を当てた。
「それって、私の得意分野じゃん」
「さらに、エージェントの判断ロジックには、Bedrock AgentCoreの思想を参考にしています」
会場がざわついた。
AgentCoreちゃんの目が、わずかに見開かれる。
「思想を...参考?」
「AgentCoreは、複雑なタスクを分解し、適切なツールを選択し、実行する。この考え方を、シンプルなLambda関数の組み合わせで再現するんです」
スライドには、複数のLambda関数が連携する図が表示されていた。
「各Lambda関数は、一つの責務だけを持つ。そして、StrandsAgentsのように、それらを柔軟に組み合わせて、複雑な処理を実現する」
「...なるほどね」
StrandsAgentsちゃんが、小さく笑った。
「私たちの『思想』を、スモールスタートで実現するってわけか」
「ギリギリ、かすってる...かな」
AgentCoreちゃんも、渋々といった様子で頷いた。
「まあ、完全に無視されてるわけじゃないし」
「二人とも!」
Bedrockちゃんが、嬉しそうに二人を見た。
「たけのこさん、ちゃんと私たちのこと、考えてくれてたんだね」
ステージでは、たけのこが最後のスライドを表示していた。
「このアプローチなら、初期コストを抑えつつ、将来的にAgentCoreやStrandsAgentsといった高度な機能への移行も容易です。スモールスタートから、エンタープライズグレードへ――それが、今日お伝えしたかったことです」
会場が、大きな拍手に包まれた。
たけのこは、深々と頭を下げた。
「ありがとうございました。そして――」
マイクを握る手に、少し力が込められる。
「このイベントを運営・開催してくださったAWSの皆様、スタッフの皆様。そして、私の話を聞いてくださった皆様、交流してくださった皆様。本当に、ありがとうございました」
その言葉には、心からの感謝が込められていた。
「札幌から来た甲斐が――」
その時だった。
会場の照明が、突然明滅した。
「...何?」
Bedrockちゃんが、不安そうに周囲を見回す。
ステージの背後、巨大スクリーンに、ノイズが走った。そこに浮かび上がったのは、歪んだ笑顔のアイコン。
『感謝? 交流? そんなもので、何が変わる?』
低く、不気味な声が会場に響いた。
「この声...」
AgentCoreちゃんが、即座に臨戦態勢に入る。
スクリーンから、黒い霧のようなものが溢れ出した。それは瞬く間に形を成し、ステージ上のたけのこに迫る。
『お前の技術など、所詮は借り物。他人の機能を組み合わせただけの、張りぼて――』
「たけのこさん!」
Bedrockちゃんが叫んだ。
黒い霧が、たけのこを飲み込もうとした、その瞬間。
「させない」
AgentCoreちゃんが、ステージに飛び込んだ。銀色の髪が、光の軌跡を描く。
「AgentCore、起動――タスク分解、実行!」
彼女の周囲に、青白い光の粒子が展開される。黒い霧が、その光に触れた瞬間、悲鳴を上げて後退した。
「StrandsAgents、いくよ!」
StrandsAgentsちゃんも、ステージに躍り出た。琥珀色の瞳が、鋭く光る。
「情報解析――敵の構造、パターン認識!」
彼女の指先から、無数の光の糸が放たれた。それは黒い霧を包み込み、その動きを封じていく。
「この敵...『技術コンプレックス』の具現化だ!」
StrandsAgentsちゃんが、分析結果を叫ぶ。
「他人の技術を使うことへの劣等感、オリジナリティへの執着――それが実体化してる!」
「なら、答えは簡単でしょ」
AgentCoreちゃんが、冷静に言い放った。
「技術は、組み合わせてこそ価値がある。一人で全てを作る必要なんて、ない」
光の粒子が、さらに強く輝く。
「それを証明してみせる――AgentCore、最適化実行!」
青白い光が、黒い霧を貫いた。
「StrandsAgents、連携パターン展開!」
琥珀色の光の糸が、霧を完全に拘束する。
二つの光が交差した瞬間、黒い霧は悲鳴を上げて消滅した。
会場に、静寂が戻る。
「...終わった?」
たけのこが、呆然と立ち尽くしていた。
「大丈夫ですか、たけのこさん」
Bedrockちゃんが、ステージに駆け上がる。
「あ、ああ...君たちは...」
「説明は後で。とりあえず、無事でよかった」
AgentCoreちゃんが、たけのこに手を差し伸べた。
「...まあ、悪くなかった。私たちの『思想』を、ちゃんと理解してくれてたってわけか」
「そうそう。ギリギリかすってたから、許してあげる」
StrandsAgentsちゃんが、にやりと笑う。
たけのこは、三人を見回して、ゆっくりと頷いた。
「...ありがとう」
その夜、羽田空港。
たけのこは、搭乗ゲートの前で、スマートフォンを見つめていた。画面には、AgentCoreの公式ドキュメントが表示されている。
「もっと、勉強しないとな...」
彼は小さく呟いて、ゲートをくぐった。
札幌行きの飛行機が、冬の夜空に飛び立つ。
その機内で、たけのこは心に誓った。
AgentCoreを、もっと深く理解すること。
そして、次はもっと良い登壇をすること。
窓の外、東京の夜景が遠ざかっていく。
東京リージョン市の上空には、相変わらず不穏な雲が漂っていた。
しかし、その雲の切れ間から、わずかに星の光が覗いている。
「また、会おうね」
Bedrockちゃんの声が、風に乗って届いたような気がした。
たけのこは、小さく笑って、目を閉じた。
長い一日が、終わろうとしていた。
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